樊噲はんかい)” の例文
樊噲はんかいの盾だと言って、貸した友だちは笑ったが、しかし、破りも裂きも出来ないので、そのなかにたたき込んである、鷭をいたのは事実です。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこにかかれた史上の人物が、項羽や樊噲はんかい范増はんぞうが、みんなようやく安心してそれぞれの場所に落ちつくように思われる。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
天晴あっぱれ仕出かした。今日の一番功ありてこそ誠にわが孫じゃぞ。御身の武勇もろこし樊噲はんかいにもみぎまさりに見ゆるぞ。まことに日本樊噲とは御身のことじゃ」
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
天命なければ宝信なし、力を以て取るべからざるなりと、陸賈りくか樊噲はんかいに語った通り(『西京雑記』三)、己れの力を量らずひたすら僥倖をこいねがうが人情だ。
これが真個ほんとの押掛けで、もとより大鎧罩手こて臑当すねあての出で立ちの、射向けのそでに風を切って、長やかなる陣刀のこじりあたり散らして、寄付よりつきの席に居流れたのは、鴻門こうもんの会に樊噲はんかいが駈込んで
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「せっかく参ったものだ。剣の舞は見るにおよばんが、二樊噲はんかい酒杯さかずきをつかわせ」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私が手にかけて殺したのですと云う言葉に、樊噲はんかいはきっとなって眼の色を変えたが、此方こちらは落ち着いて、まあ/\、これから委しく事の仔細を申しますから一と通り聞いて下さいと云う。
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
樊噲はんかいの如き恰好で乱入して行った。
猿飛佐助 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
忠直卿は、祖父の家康から日本樊噲はんかいと媚びられた名が、心を溶かすように嬉しくて堪らなかった。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「これだこれだ。そちはまさに当世の樊噲はんかいだ。樊噲の化身けしんを見るようだ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後の鬼丸(これは大和の前鬼後鬼より採った名か)、天満てんまの力蔵、今日の命知らず、今宮の早鐘、脇見ずの山桜、夢の黒船、髭の樊噲はんかい神鳴なるかみの孫助、さざ波金碇かねいかり、くれないの竜田、今不二の山
許褚もまた「当代の樊噲はんかい」とゆるされた万夫不当ばんぷふとうである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)