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棲巣
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すみか
窺ひ見る程に元は
相應の旅籠屋と見えて家の作りやう
由緒ありげに見えけれども彼の小娘の外一人もなきは
山樵か
盜賊の
棲巣ならんと
頻りに怪しくなり
逃道を
ぞ
籠たりける此所は名に
負周智郡大日山の
續き秋葉山の
絶頂なれば
大樹高木生茂り晝さへ
暗き
木下闇夜は猶さらに月
暗く
森々として
更行樣に如何にも
天魔邪神の
棲巣とも云べき
峯には
猿猴の木傳ふ聲谷には流水
滔々と
而木魂に
響遠寺の
鐘も
最物
凄く遙に聞ば
野路の
狼吼て青嵐
颯々と
梢を