梅雨ばいう)” の例文
併し、嘉三郎は、そのまま何も言わずに、残っている冷酒ひやざけを一息にあおると、せわしく勘定をして、梅雨ばいうの暗い往来へ出て行った。
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
梅雨ばいうはまだ明けてはいないが、朝から好く晴れた空は、日の長いころの事で、夕飯をすましても、まだたそがれようともしない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あるあさ二人ふたりは、このおおきなほたるもんでいるのをいだしました。そのときすでに、じめじめした梅雨ばいうぎて、そらは、まぶしくかがやいていたのであります。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
あふちいてゐるいへ外側そとがは木立こだちの下蔭したかげに、ぽた/\とつゆちるほどに、かぜきとほる。それは、幾日いくにちつゞいてをつた梅雨ばいうあがかぜである、といふ意味いみです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
梅雨ばいうは誰しも発狂しそうな時節だ。安達君から
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まだ梅雨ばいうの時期にはならないが、昨日も今日も、いつ晴れるとも知らず降りつゞく雨は、已に袷からセルの單衣ひとへを着た氣早い人の肩に羽織を着せかけ
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
丁度梅雨ばいうの時節、幾日となく降りつゞいた雨がふと其日の午後ひるすぎ小止をやみした。の明けたやうに、パツと流れて來る日の光の強さは、もうすつかり夏である。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
梅雨ばいうはこんな風に何時から降出したともなく降り出して何時止むとも知らず引き續く………
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
梅雨ばいうはこんな風に何時から降出したともなく降り出して何時止むとも知らず引き続く……
花より雨に (新字旧仮名) / 永井荷風(著)