柵門さくもん)” の例文
石弩いしゆみ、針縄、逆茂木さかもぎなどで守られた柵門さくもんを三つも通って、一群の百姓と縄付きの大坊主が、大勢の賊に前後をかこまれて登って来た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神戸から大坂に続いて行っている街道両口の柵門さくもんには、監視の英国兵が立ち、武士および佩刀者はいとうしゃの通行は止められ、町々は厳重に警戒された。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
歳子の兄の住む土地の一劃は、道路まで誰か個人の私有地になつてゐて、道の口々は柵門さくもんで防がれ、割合ひに用心堅固の場所だつた。女の真夜中の一人歩きもたいした心配はなかつた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
やがて柵門さくもんの方に人馬の喧噪けんそうが聞かれだしたころには、陽も高かった。そして帝以下の妃たちは、朝の身粧みよそおいからすべてをすませ
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらかじめ矢文やぶみをもって予告のあった敵方の客将黒田官兵衛孝高よしたかが、いま輿こしにのって、山下の柵門さくもんまで来た——というらせであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まもなく、東街道口の新関しんぜき柵門さくもんと番所小屋が見えてきた。たたたたと、同勢小早こばやめに足なみをはやめて、そこの前にさしかかると
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二百ぢかい手下が、銅鑼どらや太鼓を鳴らし、柵門さくもんで一度、わあっと気勢をあげた。そしてたちまち、一列の黒蛇こくだとなって麓の方へ沈んでいった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、国境の柵門さくもんから、早打ちが飛んできた。約五十騎ほどの将士が関所を破って魏へ入ったという報らせである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、おもって、これはおとといから、道をかえてみたのだが、町へ近づくと、かならず軍の柵門さくもんがあり、兵馬がいて
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関門屯所の柵門さくもんの前で、駕を降りた。すぐ、役宅へ入って、誰彼たれかれを招いて、夜半よなかの時間や、警衛のあわせだった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
起き抜けに、彼は、広い館や柵門さくもんを、一巡した。たくさんな土倉ものぞいた。けれど、以前はそこに充ちていた稲もなく、武器もほとんど失われている。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女が立ち去るとすぐ、彼方の柵門さくもんの方から、一人の若い警固武者が、こっちへ駈けて来るのが見える。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明の車は、その間に、南の柵門さくもんを出て、陣後につづく林の中へ隠々として逃げかくれてゆく。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかつい声と一緒に、眼のまえの柵門さくもんが大きく口を開けた。暗闇の中にひしめく兵の影は、一団百人以上もいるかと見えた。その波の揺れるたびに、閃々せんせんと槍の穂が瞳を刺す。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵の前線から城下の柵門さくもんへ早馬の駈けてゆくのが見られた。城内のさしずを仰いだものらしい。やがて迎えに来た部将の案内に従って、使者たちは柵門に入りまた城門へかかった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行くほどに間もなく、左手ゆんでの山に、味方の孤城、大高の白壁が見え、柵門さくもんが望まれた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊勢路いせじ美濃路みのじ、いずこといえど、この大戦場の十里四方、柵門さくもんのないところはない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべて北国勢に仕立て、柵門さくもんを通るたびに袁将軍の直属蒋奇しょうきの手の者であるが、兵糧の守備に増派され、烏巣へ行くのだと答えれば——夜陰といえども疑わずに通すにちがいありません
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見れば陣所の仮屋がある柵門さくもんがある。強右衛門は、何とはなく、どきッとした。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、阿能は、四ツん這いになって、柵門さくもんきわを、先に通ってみせた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)