染殿そめどの)” の例文
すはだしで、その染殿そめどのひがしもんよりはしで、きたざまにはしつて、一條いちでうより西にしへ、西にし洞院とうゐん、それからみなみへ、洞院下とうゐんさがりはしつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『政事要略』七〇に、裸鬼が槌を以て病人に向うを氏神が追いしりぞけた事あり。『今昔物語』二十の七に、染殿そめどの后を犯した婬鬼赤褌を著けて腰に槌を差したと記す。
よくものの草紙などに、震旦しんたんから天狗てんぐが渡ったと書いてありますのは、丁度あの染殿そめどの御后おきさきに鬼がいたなどと申します通り、この沙門の事をたとえて云ったのでございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やあ、緑青色の夥間なかまじよ、染殿そめどの御后おんきさい垣間かいま見た、天狗てんぐが通力を失って、羽の折れたとびとなって都大路にふたふたと羽搏はうったごとく……あわただしいげ方して、通用門から、どたりと廻る。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
耶蘇ヤソ新教の創立者ルーテルなどいずれも婬鬼を父として生まれたとか(一八七九年パリ板シニストラリの『婬鬼論』五五頁)、わが邦には古く金剛山の聖人染殿そめどの后を恋い餓死して黒鬼となり
なつころ染殿そめどの辰巳たつみやま木隱こがくれに、君達きみたち二三人にさんにんばかりすゞんだうちに、春家はるいへまじつたが、ひとたりけるそばよりしも、三尺許さんじやくばかりなる烏蛇くろへび這出はひでたりければ、春家はるいへはまだがつかなかつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)