板囲いたがこ)” の例文
旧字:板圍
ほんの板囲いたがこいに過ぎない仮屋の藺莚いむしろのうえではあるが、白いふすまは厚くかさねられ、片隅には、職人図を描いた屏風びょうぶ一張ひとはり立てられてあった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「か」の字川の瀬の中に板囲いたがこいをした、「独鈷とっこの湯」と言う共同風呂がある、その温泉の石槽いしぶねの中にまる一晩沈んでいた揚句あげく心臓痲痺しんぞうまひを起して死んだのです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
トタンきで、板壁というよりほんの板囲いたがこいだ。窓らしいものがなくて、たぶん雨戸の古だろうと思われるようなものが押上窓のように上部にとりつけてあるきりだ。
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)
菰張こもばりや板囲いたがこいを切りほどいて女子供をそこから逃がしたから、怪我人は大分あったけれども、見物から死人は出さないで一通りは逃がしたけれど、かわいそうに軽業をする美人連は
瀬川にひかれて私はきびすをかえした。そして、うちから見えない道端みちばた板囲いたがこいのかげで、しばらく立ち話をした。が、別に用があるわけではなかった。ただ彼は私に会いに来たのだった。
というのは、その怪しき大火光の元が分るような、不思議な怪物が、敬二の視界のなかにお目見得したからである。それは丁度、東京ビルの横に、板囲いたがこいをされた広い空地あきちの中であった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
若しやと思って、夫人がこの島へ来られた日をくって見ますと、丁度この円柱の板囲いたがこいが出来上って、セメントを流し込み始めた頃であったことが分りました。実に安全な隠し場所ですね。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四方しほう板囲いたがこいにして、わずかに正面しょうめん入口いりぐちのみをのこし、内部なかは三つぼばかりの板敷いたじき屋根やね丸味まるみのついたこけらき、どこにも装飾そうしょくらしいものはないのですが、ただすべてがいかにもかむさびて、屋根やねにも