きたり)” の例文
旧字:
蓮華寺に詣り、午後磨針嶺すりばりれい望湖堂に小休す。数日木曾山道の幽邃にあきし故此にきたり湖面滔漫を遠望して胸中の鬱穢うつくわい一時消尽せり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「珍らしや文角ぬし。什麼そも何として此処にはきたりたまひたる。そはとまれかくもあれ、そののちは御健勝にて喜ばし」ト、一礼すれば文角は点頭うなず
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
世の風潮の変りきたりて「我らの時代」とならん時は我の飢渇より脱する時なり、神はこの世の富にまさる心の富を我に賜うが故に我終生貧なるとも忍び得べし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
人王じんおう九十五代ニ当ツテ、天下一たび乱レテ而テしゅやすカラズ。此時東魚とうぎょきたりテ四海ヲ呑ム。西天ニ没スルコト三百七十余箇日。西鳥来テ東魚ヲ食ウ。其後海内一ニ帰スルコト三年。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
内外の分は未だ之を忘れず、西軍あるいは暴ならん、東軍或は無法ならん、きたりて我輩に害を加えんとする者あらば、我また男児なり、よく之を防がん、之を防て力足らざるときはただ一死あるのみ
故社員の一言今尚精神 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
十日の御書状拝見つかまつり候。庭の模様がへ、北村のおくりし朝顔の事などうけたまわり候。おきみさんより同日の書状まゐり候。家事(しゅうとめに仕へ子を育つるなど)のため何事(文芸など)も出来ぬよしかこちきたり候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)