ほう)” の例文
とりこにしてある沢山の植木——ほうかえでが、林のように茂っている庭の向うが、往来みちになっていて、そこで、数人の者が斬合っていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長さ九寸、ほうの木で作つたヒヨロヒヨロの矢ですから、他の場所に當つたんでは、大したわざもしなかつたでせうが、眼玉を射ただけに、これは厄介です。
自分から云はせると、校長と謂ひ此男と謂ひ、營養不足で天然に立枯になつたほうの木の樣なもので、松なら枯れても枝振えだぶりといふ事もあるが、何の風情もない。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かさこそと雑木の葉が、ばさりとほうの木の広葉が、……朴の木の葉は雪のように白くらされていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ほうの木、ドロ、山モミヂ、オヒヨウにれ、ハンの木、アサダ、サンチン、カタ杉、檜の木などだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
試みに新緑の谷間を遡って見玉みたまえ。最奥の部落を離れて間もなく水際に大きな葉を拡げた大木の梢に、白い花のむらがり咲くのを見るであろう。それは一かかえも二抱もあるとちほうの木だ。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
くすが萠え、ハリギリが萠え、ほうが萠え、篠懸すずかけの並木が萠える。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
木枠といっても、桐にほうの木をあしらったごく軽いもの。
それには間違ひもなく血が附いて居さうな氣がして、灯の下に持つて來ると、血などは少しも附いて居ず、その代り鞘の全體——わけても鯉口こひぐちのあたりのほうの木が、心持濡れて居るのは見逃せません。
「でなかったら葬ってくれ。落葉がいいよ、ほうの落葉が」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この沈默を破つた一番鎗は古山ほうの木である。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
光る、光る、すばらしく光るほうの葉裏である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
光る、光る、光る、光るほうの葉裏である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)