曹達ソーダ)” の例文
灰汁あく」は天然曹達ソーダ(natron)すなわち天然に存する結晶せる曹達である。これを石鹸せっけんの如く使用するのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
這入はいるにしても相当の体裁をしたカフェーや飲食店で、アイスクリームや曹達ソーダ水位は平気でめたり吸ったりしている。
(水ではないぞ、また曹達ソーダや何かの結晶けっしょうだぞ。いまのうちひどくよろこんでだまされたとき力をおとしちゃいかないぞ。)
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「渋屋」は「ペイント塗工」に、「一ぜんめし」は「和洋食堂」に、「御膳しるこ」は「アイスクリーム、曹達ソーダ水」に、おのおのその看板を塗りかえたいま。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
其すつぱいことといつたらふるひあがるやうだ。これが木醋といふので、これへ石灰を中和して仕上げたのが醋酸石灰で曹達ソーダで仕上げたのが醋酸曹達となるのだ。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
郷里の母の手紙は、苛性曹達ソーダんだ彼の死を告げてきた。あの莫大な夢想と陶酔と自尊心の荷が、とうとう始末に逐えなくなったのかと、私は異様なショックに打たれたのだ。
(新字新仮名) / 金史良(著)
真綿はまゆ曹達ソーダでくたくた煮ていとぐちさぐり、水にさらしてさなぎを取りてたものを、板にしてひろげるのだったが、彼女はうた一つ歌わず青春の甘い夢もなく、脇目わきめもふらず働いているうちに
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は一度、Tölzテルツ に行かうと思ひつつ遂にその念願を果さずにしまつた。Tölzテルツ はイーサル川の上流にある町で、沃度ヨード曹達ソーダ硫黄いわうを含んだ鉱泉がくために一つの浴泉地にもなつてゐる。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
数年以来ポトアシクソルフェート(すなわち硫酸剥篤亜斯)、ポトアシクヨテェート(すなわち沃酸剥篤亜斯)、ソヂクカルボナァート(すなわち炭酸曹達ソーダ)等の名称をもって舶載はくさいする化学薬品あり。
化学改革の大略 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
この塩は日本の塩と違って余程曹達ソーダの類も含んで居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
曹達ソーダとかいうものばかりで出来る自然発火装置だの、ドブの中に出来る白い毒石の探し方だの……そんなものは、みんな印度のインターナショナルの連中から伝わったので
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わななく指をソロソロと頭から離して、そこいらを見まわすと、ウイスキー曹達ソーダに濡れた切株の端に両手を突いて立上った。呉羽の希臘ギリシャ型の鼻の頭をピッタリと凝視しておもむろに唇を動かした。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「だからウイスキー曹達ソーダを、お引っくり返しになったの……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)