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春風
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しゆんぷう
藤木川の岸を
徘徊すれば、
孟宗は黄に、
梅花は白く、
春風殆ど
面を吹くが如し。
偶路傍の
大石に一匹の
蝿のとまれるあり。
さしつたりと
電光石火の
勢ひ、げにもや
電光影裡春風を
斬るごとく、
形は
見えねど
三尖衝角の
回旋る
處、
敵船微塵に
碎け、
新式魚形水雷の
駛るところ
白龍天に
跳る、
殘る
賊船早や三
隻
柵内の
砂乾きゐて
春風にカンガルー
跳ぶ
跳躍のさぶしも
春風珠簾を吹いて、
銀鉤を
蕩するの処、
蛾眉の宮人の
衣裙を洗ふを見る、
月事も
亦風流ならずや。(四月十六日)