明礬みょうばん)” の例文
うそ、狐、狸、狗、鹿、鯨、また殊に膃肭獣おっとせいのタケリ、すなわち牡具ぼぐ明礬みょうばんで煮固めて防腐し乾したのを売るを別段不思議と思わず。
明礬みょうばんをとかしたように、僕の頭脳は急にハッキリにじんできた。そうだ、まだミチミを救いだせるかもしれないチャンスが残っていたのだ。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
奥には、板新道の雛妓おしゃくらしいのが、五人ほど、水盤をのぞき合って、明礬みょうばん辻占つじうらだの、水草の弄具おもちゃなどを咲かせて、騒いでいる。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久左衛門は、茄子畑へ明礬みょうばんを撒けば来年も連作が出来るので、茄子にしようか、馬鈴薯にしようかと朝から迷っている風だ。
緑青ろくしょう明礬みょうばん、たんぱん、磁石などを見つけ出し、そこで山金採掘の仕事にとりかかりましたが、それはさほどうまくゆかなかったとのことです。
平賀源内 (新字新仮名) / 石原純(著)
明礬みょうばん吸入の効果が大規模に実験されたのもその時のことであって、今日ではそれに代えて、有効なヨードチンキが外用されるようになったのである。
温泉のすうはかず限りもない。温泉場と名のついた別府、浜脇、観海寺、亀川、鉄輪、芝石、堀田、明礬みょうばん、新別府などがある。別府市内だけでも浴場が十あまりある。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
白紙に明礬みょうばんとか南瓜かぼちゃの汁とかニガリとか、灰汁あくとかいうもので、何か書いてあるんじゃないかと思ったんだろうよ。が、やはりただの白紙だ、隠し文字も何にもなかったらしい
出血を止めるために灼熱しゃくねつした炭でお前たちを焦がしたり、循環を助けるためにからだの中へ針金をさし込むこともあろう。塩、酢、明礬みょうばん、時には硫酸を食事に与えることもあろう。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
ねむり薬も、ねむり薬、こんな利くのは天下に類がねえ——しかも、こっちは、明礬みょうばんをしめした布で鼻をふさいでいれば、いっかな薬をうけつけずに済むというのさ。おれが、実地を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
前にあやしい病気にかかり、そのとき蝶子は「なんちう人やろ」とおこりながらも、まじないに、屋根瓦やねがわらにへばりついているねこふん明礬みょうばんせんじてこっそり飲ませたところ効目ききめがあったので
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
こう思うと、純一の心は濁水に明礬みょうばんを入れたように、思いの外早く澄んで来た。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
真鍮座を設け、その冥加金みょうがきんの幾割かを、公然として着服し、味を占めては朱、人参、竜脳、明礬みょうばんというがごとき、薬品をさえ専売とし、さらに石灰、油等のごとき、日常品をさえ専売とし
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明礬みょうばんの水ででも洗ったらどうだか、只じゃなかなか落ちねえや」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
落合川辺の木曾川の水は深く明礬みょうばん色で、崖や枯木の茶色と対照す
一九二七年春より (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
明礬みょうばんで書いてあるんだ」
紅色ダイヤ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)