早技はやわざ)” の例文
緩漫と思い込んだあげく、現に眼覚めざましい早技はやわざで取って投げられていながら、津田はこう評するよりほかに仕方がなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
怖るべき早技はやわざで、一人を斬り、一人を蹴仆し、疾風迅雷じんらいに駈け去った弦之丞の姿は、時既に、遠い闇に消えていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に眼にもとまらぬ早技はやわざでひゅういと空にうなった切支丹きりしたん十字の呪縛剣じゅばくけん、たちまちそれを、やんわり振りかぶった大上段の構えは——せきとしてさながら夜の湖面。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
電光石火の早技はやわざで一頭の馬が祖父を背に乗せてパッと跳ねあがつた。
早技はやわざとすくふただちのこのきまり大外刈おほそとがりの型のよろしさ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「目にも止まらぬ早技はやわざです」
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そこらの歯みがき屋さんのつかう仕掛しかけ独楽とは大きにことちがい、種やからくりのない正銘な芸と早技はやわざ、あざやかにまいりましても投げ銭はおことわり
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
龍太郎りゅうたろう助太刀すけだちにでようとおもうまに、みごとに勝負をつけてしまった若者の早技はやわざに、したをまいて感嘆かんたんしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊那丸さまは、ごそうと一しょに斬りこんできた六部ろくぶのひとが、おそろしい早技はやわざでどこともなく連れていってしまいました。あの六部が、善人か悪人か、わたくしにもわからないのです。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その早技はやわざも、非凡ひぼんであったが、よりおどろくべきものは、かれのこい眉毛まゆげのかげから、らんらんたる底光をはなってくる二つのひとみである。それは、やりの穂先よりするどい光をもっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今の、早技はやわざにも似ず、かつらをつけたような五分月代さかやきに、秀麗な眉目の持ち主。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気殺きさつの声と早技はやわざ
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)