新藁しんわら)” の例文
今でも覚えているのは旧十月のの日の晩に、と称して新藁しんわらで太いつとを巻き立て、地面を打ってまわる遊びがあった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
岸を頼んだ若木の家造やづくり、近ごろ別家をしたばかりで、いたかやさえ浅みどり、新藁しんわらかけた島田が似合おう、女房は子持ちながら、年紀としはまだ二十二三。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新藁しんわらは、いきなひと投島田なげしまだばかりに売れるのではなく、素人しろうとでも洗い髪を束ねたりしてよく売れた。
けれども、汽車の窓から見る山野の色は、さすがに荒涼たるもので、ところどころに小家のように積んである新藁しんわらの姿は、遠山とおやまの雪とともにさびしい景色の一つであります。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
稼収かおさまって平野濶へいやひろし」晩稲も苅られて、田圃たんぼも一望ガランとして居る。畑の桑は一株ずつもとどりわれる。一束ずつ奇麗に結わえた新藁しんわらは、風よけがわりにずらりと家の周囲まわりにかけられる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
着換えなど沢山着換えまして、髪は油気なし、つぶしという島田に致しまして、丈長たけなが新藁しんわらをかけまして、こうがいは長さ一尺で、厚み八も有ったという、長い物を差して歩いたもので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一度五月の節句に、催しの仮装の時、水髪の芸子島田に、青い新藁しんわらで、五尺の菖蒲あやめもすそいた姿を見たものがある、と聞く。……貴殿はいい月日の下に生れたな、と言わねばならぬように思う。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婀娜な姿なりをして白粉気おしろけなしで、つぶしの島田に新藁しんわら丈長たけながを掛けて、こうがいなどは昔風の巾八分長さ一尺もあり、狭い路地は頭を横にしなければ通れないくらいで、立派を尽しましたものでございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)