敷瓦しきがわら)” の例文
そうしてそれがことごとく敷瓦しきがわらで敷きつめられている模様が、何だか支那の御寺へでも行ったような沈んだ心持を僕に与えました。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、物悲しい戦争の空気は、敷瓦しきがわらに触れる拍車の音にも、たくの上に脱いだ外套がいとうの色にも、至る所にうかがわれるのであった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
勿論もちろん俳味をもっぱらとする処から大きな屏風びょうぶや大名道具にはふだを入れなかったが金燈籠きんどうろう膳椀ぜんわん火桶ひおけ手洗鉢ちょうずばち敷瓦しきがわら更紗さらさ
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
敷瓦しきがわら。陶器。藍絵。魚釣の図。和蘭オランダデルフト。四寸二分角。厚み三分。著者蔵。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
点々と、熊の歩いたやうな泥沓のあとが、柱廊の敷瓦しきがわらのうへにつづいてゐる。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
桔梗ききょう紫苑しおんの紫はなおあざやかなのに、早くも盛りをすごした白萩しらはぎは泣き伏す女の乱れた髪のように四阿屋の敷瓦しきがわらの上に流るる如く倒れている。生き残った虫の鳴音なくねが露深いそのかげに糸よりも細く聞えます。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いろいろのなまめかしい身の投げざまをした若い女たちの身体の線が如何にも柔く豊かに見えるのが、自分をして丁度、宮殿の敷瓦しきがわらの上につど土耳其トルコ美人のむれを描いたオリヤンタリストの油絵に対するような
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
黒ずんだ敷瓦しきがわらを赤く色付け