おす)” の例文
自分のおすわった師匠がその電気を取りいで、自分に掛けてくれて、そのおかげで自分が生涯ぴりぴりと動いているように思っている。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「もうしもうし花魁おいらんえ、と云われてはしなんざますえとふり返る、途端とたんに切り込むやいばの光」という変な文句は、私がその時分南麟からおすわったのか
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんでもお前さんは誰にも物をおすわらないで、誰にもあたまかがめないでいて、とうとう枯れたとうのように折れてしまうのだわ。わたしそんな事にはならなくってよ。さようなら。
そのいわれを聞くと、子路と云う男は、一つ何かおすわって、それをまだ行わないうちに、また新らしい事を聞くと苦にするほど正直だからだって云うんです。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私の家の定紋じょうもん井桁いげたに菊なので、それにちなんだ菊に井戸を使って、喜久井町としたという話は、父自身の口から聴いたのか、または他のものからおすわったのか
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私が大学でおすわったある西洋人が日本を去る時、私は何か餞別せんべつを贈ろうと思って、宅の蔵から高蒔絵たかまきえふさの付いた美しい文箱ふばこを取り出して来た事も、もう古い昔である。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「今日は教育会があるので来られない」と細君の事か何かを、そばにいた坊主頭の丸々と肥えた小さい人に話していた。この丸い小さな人がKという公爵である事を、自分はあとで三沢からおすわった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)