くる)” の例文
または藝者や素敵な美人や家鴨あひる……引ツくるめていふと、其等の種々の人や動物や出來事が、チラリ、ホラリと眼に映ツてそして消えた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その木挽こびきの代が十円ほど。木代、木挽代、運賃引ッくるめてずっと高く積ってまず四十五円位のものであろうと私は見ました。
刀剣かたなはそのまゝくるめて久原家の土蔵に持込まれたが、流石に三十年の間朝夕手馴れたものだけに、犬養氏も時々は思ひ出してついほろりとする。
母親は急に出ていたものを引っくるめるようにして、「忘れているというでもないけれど、着せる先へ立って、揚げが短いなんて言うと困ると思って。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
またそれと反対に、こっちにあって、向うにないものもある、その向うにないものは何であるかというに、引ッくるめて言えば、水成火成、または変成の大岩塊に、火山
日本山岳景の特色 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
信一郎は、求めらるゝまゝに、ポケットの底から、ハンカチーフにくるんだ謎の時計を取り出した。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
だが、さうした整頓せられない種々な形をほしいままに考へることは、かへつて正確な知識を捉へることの出来ないことだから、しばらく、記・紀・風土記の援用文に見えた代表的な姿にくるめて説かねばならぬ。
首と胴とは離れるのだが、兎に角立派にくるんで
何うかして其の全ての考を引ツくるむでゐるどくガスさへ消えて了ツたならば、自ら立派な名案が出て來るやうに思ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
信一郎は、求めらるゝまゝに、ポケットの底から、ハンカチーフにくるんだなぞの時計を取り出した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
手近の愛鷹あしたか山さえ、北の最高峰越前岳から、南の位牌いはい岳を連ぬるところの、のこぎりの歯を立てた鋸岳や、黒岳を引っくるめて、山一杯に緑のほのおを吐く森林が、水中の藻の揺らめくように
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ローザは「あの池の水が」と気にしていたという、突然、九月一日の大震災が来た、くだんの貯水池が、決潰して、辻村の家が五千坪もあるという庭園の、老樹と竹林を引っくるめて、泥流の海と化した