抱緊だきし)” の例文
わかひと人形にんぎやうはこんであとになりさきになり、天守てんしゆはいつて四階目しかいめのぼつた、ところはしら木像もくざう抱緊だきしめて、んだやうにねむつてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
げば又あふりて、その余せるを男に差せば、受けて納めて、手をりて、顔見合せて、抱緊だきしめて、惜めばいよいよ尽せぬ名残なごりを、いかにせばやと思惑おもひまどへる互の心は
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうでなくば、私を殺して早うおそばに連れて行って下さいまし、よ、よ。と力一杯抱緊だきしめて、身を震わせば人形もともにわななくごとくなり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
情に堪えないで、そのまま抱緊だきしめでもしようものなら、立処たちどころにぱッと羽搏はばたきを打つ……たちまち蛇が寸断ずたずたになるんだ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうして貴僧あなた摺抜すりぬけられよう、突離されよう、振切られましょう、私は引寄せます、抱緊だきしめます。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)