扮裝いでたち)” の例文
新字:扮装
思はず、今入つて來た入口の方へ眼を移すと、暖簾のれんの間から、鉢卷、たすきと言つた扮裝いでたちの人間が、押し重つて覗いて居るではありませんか。
たれおも怪我人けがにんはこばれたのだと勘次かんじぐにさとつてさうしてなんだか悚然ぞつとした。かれ業々げふ/\しい自分じぶん扮裝いでたちぢて躊躇ちうちよしつゝ案内あんないうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
りうとした扮裝いでたちだつたらどうだろう? あの別嬪がその時どんなをあげるだらうなあ? あの父親おやぢは、うちの局長は、いつたい何と言ふかしらん? なかなかどうして
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
し。」と決然けつぜんとし、長火鉢ながひばちまへはなれたはいが、あまさわやかならぬ扮裝いでたち
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一座の中でも、背の低い、色の黒い、有るか無きかの髭を生やした、洋服扮裝いでたち醜男ぶをとこが、四方八方に愛嬌を振舞いては、輕い駄洒落を云つて、顏に似合はぬ優しい聲でキャッ/\と笑ふ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
小川の家では折角下男に送らせようと言つて呉れたのを斷つて、教へられた儘の線路傳ひ、手には洋杖ステッキの外に何も持たぬ背廣扮裝いでたちの輕々しさ、畫家の吉野は今しも唯一人好摩停車場に辿り着いた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)