てん)” の例文
かあねえだ。もの、理合りあいを言わねえ事にゃ、ハイ気が済みましねえ。お前様も明神様お知己ちかづきなら聞かっしゃい。老耆おいぼれてんぼうじじいに、若いものの酔漢よいどれ介抱やっかいあに、出来べい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それも可い、無い子だねなら断念あきらめべいが、提灯ちょうちん火傷やけどをするのを、何で、黙って見てござった。わしてんぼうでせえなくば、おなじ車にゆわえるちゅうて、こう、けんどんに、さかしまにゃ縛らねえだ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と続いた、てんぼう蟹は、夥間なかまの穴の上を冷飯草履ひやめしぞうり、両足をしゃちこばらせて、舞鶴の紋の白い、萌黄もえぎの、これも大包おおづつみ。夜具を入れたのを引背負ひっしょったは、民が塗炭とたんくるしんだ、戦国時代の駆落かけおちめく。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)