懸金かけがね)” の例文
この扉を開くには、まず潜り戸の輪、懸金かけがねじょうはずして中に入ってかんぬきを除いて、それから扉を左右に開くようになっている。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
瓦斯の火が済むと、マッチの箱をふところへ入れて、入口へ往って障子しょうじを開け、それから懸金かけがねになった錠前じょうまえに指をかけた。錠前は氷のように冷たかった。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
またいわく小屋に小馬を入れ戸をとざして内に横扃よこさし外に懸金かけがねをさし置くにいつも小馬が戸外に出居るを不思議と主人がうかがうに小馬まず自らさしを抜き嘶くと
やがてひっそりとつぼねの中が寝静まった様子であったが、その時不意に、平中のりかゝっている戸の内側に人のけはいがして、カタリと懸金かけがねはずす音がした。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これを見、彼を聞きたりし、伝内は何とかしけむ、つと身を起して土間に下立おりたち、ハヤ懸金かけがねに手を懸けつ。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはなんだかにわかにトランクの中へ或る重い物が入ったように感じたのである。そこで彼は念のためトランクをゴム靴を並べてあるその上に置くと、トランクの懸金かけがねをひらいて開けてみた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「………彼処の障子しょうじ懸金かけがねを掛けて来るのを忘れましたわ。ちょっと掛けて参りますわね」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
藤枝は門の懸金かけがねをかけ、飛びだしたままで開け放してあった玄関の障子を締めて、刀をりながら次のへやへ往った。きれいな女が行燈の前で胡坐あぐらをかいて、傍に飯櫃めしびつを引き寄せて飯をっていた。
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)