懦弱だじゃく)” の例文
羅馬は栄華の極盛に達し国民は相次いで華美逸楽へとはしった結果、当初の剛健勇武なる民は国を挙げて文雅懦弱だじゃくな国民となり
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
しかしそのいずれをもなしえなかったような懦弱だじゃくなものは、やむをえず人の門に立ち、袖にすがって憐みを乞う、すなわち乞食となるのです。
それはいいが、そのいいところはまねずに、まね易い頽廃的なところばかりをまねるために、国民一般が懦弱だじゃくとなり、センチメンタルとなる。
(わしを見た人々は、必ず、自分の、当今の懦弱だじゃくな、贅沢な振舞を省みるであろう。寝静まって、良心の冴えてくる時、不義に虐げられた時——)
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
行きづまった、けれどもその理由は、申し上げません等と、なんという思わせ振りな懦弱だじゃくな言いかたをするのだろう。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
現時の、不道徳の跳梁ちょうりょう、快楽の追求、懦弱だじゃく、無政府状態、などを僕は少しも恐れない。忍耐だ! 持続せんと欲する者は堪え忍ばなければならない。
しかれども封建君主はいかに不肖なりといえども、いかに懦弱だじゃくなりといえども、いかに狂暴放奢ほうしゃなりといえども、決して窮民となることあたわざるなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人格を発現するのは一時の情欲に従うのではなく、最も厳粛なる内面の要求に従うのである。放縦懦弱だじゃくとは正反対であって、かえって艱難かんなん辛苦の事業である。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
主婦あるじは楊枝をくわえて帳場の方へ上り込んで来る書生の懦弱だじゃくな様子を見ると、苦い顔をして言った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
飢餓や睡眠という懦弱だじゃくな要求を感じないような高度の智的存在は、疑いもなく人間よりも遥かに完全な存在であるが、しかし人間がかかる見本を真似ようとするとすれば
今、御身の説かれたような先祖をもちながら、子孫には、朕のごとき懦弱だじゃくなものが生れたかと思うて、朕は朕の身をかなしむのである。……国舅、さらに説いて、朕におしえよ。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懦弱だじゃくにさえ見える範覚ではあったが、その実「棒」の一手にかけては、鬼神をあざむく使い手で、金環金筋で堅固に作った、金剛杖の一薙ひとなぎは、利刃りじんよりも凄く鉄才棒かなさいぼうよりも
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
文学の実際は人間の堕落を潤色じゅんしょくして、懦弱だじゃくな人間を更に懦弱だじゃくにするばかりだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……青木竜平あおきりゅうへい——長男千三せんぞう……チビ公と称す、懦弱だじゃく取るに足らず……
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
不思議の血=懦弱だじゃくと欲張=髯将軍の一喝=技手の惨死=狡猾船頭=盆踊り見物=弱い剛力=登山競走=天狗の面=天幕てんとの火事=廃殿の一夜=山頂の地震=剛力の逃亡=焼酎の祟=一里の徒競走=とんだ宿屋
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
この皇帝は外征を好んだ父のアウレル皇帝とは性格がまったく違って、戦争が大嫌いで、奢侈しゃし遊楽のみにふけり、まことに懦弱だじゃく怯懦きょうだで、非常に我儘わがまま勝手な皇帝でありました。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
懦弱だじゃくきわまる都督の作戦には、今後とも服しません。私が従わないのは、軍律にそむくかも知れませんが、呉国のためには最大の計であると信じています。この忠魂、なんぞ死を
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将来兵士となるの見込みなき懦弱だじゃくなる小児はこれをほふるも可なり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「ちがう、近藤勇はあんな懦弱だじゃくな顔をしておらんぞ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
(五)懦弱だじゃく千万
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
その懦弱だじゃく、卑劣、これをわが劉予州の麾下の行動と較べたら、同日の談ではありますまい
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼ら、懦弱だじゃくな輩に、何で本心を打明けよう。仔細は輿論よろんのうごきを察しるためにほかならない。或る者へは開戦といい、或る者へは降伏といい、味方の士気と異論の者の顔ぶれを
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何たる懦弱だじゃくさ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)