いつくし)” の例文
かの新婦はなよめ——即ち大聲おほごゑによばはりつゝ尊き血をもてこれとえにしを結べる者の新婦——をしてそのいつくしむ者のもとくにあたり 三一—三三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
両親を一時に失った私ども二人は、慈愛深い神父フリスチァンの手許てもとに引き取られて、その後を実父にも優ったいつくしみの下に育てられて参りました。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
お勢の生立おいたちの有様、生来しょうらい子煩悩こぼんのうの孫兵衛を父に持ち、他人には薄情でも我子には眼の無いお政を母に持ッた事ゆえ、幼少の折より挿頭かざしの花、きぬの裏の玉といつくしまれ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
爾曹なんぢらの敵をいつくしみ、爾曹なんぢらのろふ者を祝し、爾曹なんぢらを憎む者を善視よくし、虐遇迫害なやめせむるものゝ爲に祈祷せよ。」
人の手でいつくしまれて居たその当時の夢を、北方の蛮人よりももつと乱暴な自然の蹂躙じうりんに任されてかへりみる人とてもない今日に、その夢を未だ見果てずに居るかと思へるのである。
自己が享けて取るべき福を惜みいつくしみて、之を存畱して置く意味に當る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)