悪婆あくば)” の例文
旧字:惡婆
自分は腕組みしてっとしていたが、我母ながらこれ実に悪婆あくばであるとつくづく情なく、ああまで済ましているところを見ると、言ったところで
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
義理も人情も知らねえ悪婆あくばでござんすぜ、うで生かして置いたからって為になる奴じゃアありやせん、いっそ今から往って是までの意趣返いしげえしに……
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
吹矢のお三とも云われる悪婆あくば、よもおめおめとは引っ込むまい、私が思うにはあのお婆、五右衛門を手もとへ引き取って以来、悪人同志気心が合って
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
源之助の時代は四十年位続いたが、その間悪婆あくば即、一口に言ふと——毒婦ものが彼の芸として通つた。あゝいふ芸は模倣し易い訣だが、どういふ訣か、此きりで無くなり相だ。
役者の一生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「女には、朝日とか、照日てるひとかね、それからおきね、悪婆あくばなんぞと云うのもあるそうだ。もっとも中で有名なのは、青頭でね。これは、元祖から、今の宗家へ伝来したのだと云うが……」
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もう是までの運命かと半ば諦めて居りますお瀧は、文治のなさけで一命を取留めた其の上に、只今の情厚き言葉に悪婆あくばながらも感じたものと見えまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まあ」とお仙驚いたが、見れば縹緻きりょうは美しく、それにりんとした品もあり、悪婆あくばでないということは、一見すぐに見てとられた。そこで愛想よくうなずいた。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
比丘尼びくに前名ぜんみょうを熊と申す女に似気にげない放蕩無頼を致しました悪婆あくばでございまするが、今はもう改心致しまして、頭髪あたまり落し、鼠の着物に腰衣を着け
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この方にこそ怨みがある! ……この悲惨みじめな境遇に、おとしいれた元兇こそ、あの悪婆あくばじゃ、鬼火の姥じゃ! ……その眷族というからには、何んのおのれら許そうや! ……が
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と云いながら突然いきなりお浪のたぶさを取って引倒ひきたおし、拳骨げんこつを固めて二ツちましたが、七人力ある拳骨ですから二七十四人に打たれるようなもので、痛いのんのと申して、悪婆あくばのお浪も驚きました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)