御面影おんおもかげ)” の例文
蜀紅しょくこうにしきと言う、天蓋てんがいも広くかかって、真黒まくろ御髪みぐし宝釵ほうさいの玉一つをもさえぎらない、御面影おんおもかげたえなること、御目おんまなざしの美しさ、……申さんは恐多おそれおおい。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みぎうたうたおわるとともに、いつしかわたくしからだくる波間なみまおどってりました、そのときちらとはいしたわがきみのはっとおどろかれた御面影おんおもかげ——それが現世げんせでの見納みおさめでございました。
思いがけなき所にて思いがけなき君の姿を見申そうろう。たとい装いを変え給うとも、三年このかた夢寐むびにも忘れぬ御面影おんおもかげを、いかで見逃し候べき。わらわは始めより頭巾の女の君なる事を承知つかまつり候。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
範宴はくから、聖徳太子のなしたもうた大業と御生涯とを、景慕していて、折もあらば、太子の古廟にこもって、夢になりと、その御面影おんおもかげ現身げんしんにえがいてみたいと宿望にしていたのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)