御台みだい)” の例文
旧字:御臺
あづちのおしろにはお留守居役の蒲生がもう右兵衛大夫どのが手うすのにんずで御台みだいやお女中さまがたをしゅごしておいでなされました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
名は岩路、御台みだいさま付きの腰元が、なにやらうろたえ顔にこっそりと参りましてな、いやはや、根ほり葉ほりききますことききますこと。
畠山六郎は御台みだいことばによって右大将家をあやめないことを知って安心したものの、無礼者と云った詞が耳の底にこびりついていてきみがわるかった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あたかもおやかた法度はっとを犯して裏庭から御台みだいのおなさけで落ちてくように、腕車くるまで歌枕に送られたが、後を知らず、顔色も悪く未明に起きると、帯を取って、小取廻ことりまわしさきを渡して
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主君の勝頼公かつよりこうをはじめ、御台みだいさま、太郎君たろうぎみさま、一門のこり少なの人数をひきいて、天目山てんもくざんのふもとまで落ちていきましたが、目にあまる織田おだ徳川とくがわの両軍におしつつまれ、みな
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(首を振り夢中になり唄う)これは世間の女房の名寄なよせ。おきさき様には政所まんどころ、北の方には御台みだい様、奥方ご新造ご内室、おかみさんにはお内方うちかた嬶左衛門内かかあざえもんうちの奴(坐り込む)馬鹿だね、あははははは。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
右に御台みだい、左にご簾中れんちゅうを従えさせまして、吹上御苑ぎょえんに臨時しつらえましたお土俵の正面お席にお着座なさいました。
関白殿を始めとして御台みだい様やお部屋様方にもたいそう眼をかけて戴いている、さすれば此方も御恩の程を有難く思い、真心を以てお仕え申すのは当りまえ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
己がその罪悪の発頭人ほっとうにんのような気がして、恐ろしくてじっとしていられなかったが、御台みだいからも禁ぜられているうえに、事件が事件であるから口外することもできなかった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
御台みだいさまは」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮仕えをする者が一人もなくなってしまいましたから、わたくしなぞは数へも入らぬ詰らぬ身分ではありますけれども、御台みだいや御公達のおんありさまを拝みますにつけ
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それは実朝の御台みだいを迎えに往くためであった。実朝の御台は奏聞そうもんを経て、坊門大納言信清卿ぼうもんだいなごんのぶきよきょう息女そくじょを迎えることになったので、鎌倉では容儀ようぎ花麗かれい壮士そうしを選んでそれを迎いに往かした。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一匁いくらという高直こうじきのお身おからだをのせながら、右に御台みだい、左に簾中れんちゅう、下々ならばご本妻におめかけですが、それらを両手に花のごとくお控えさせにあいなり、うしろには老女、おつぼね