後鉢巻うしろはちまき)” の例文
大海浜だいかいはま宿院浜しゆくゐんはま熊野浜くまのはまなどと組々の名の書いた団扇うちはを持つて、後鉢巻うしろはちまきをした地車だんじり曳きの子供等が、幾十人となく裸足はだしで道を通ります。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いかめしい後鉢巻うしろはちまきをして、ばかま穿いた男が十人ばかりずつ、舞台の上に三列にならんで、その三十人がことごとく抜き身をげているには魂消たまげた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
手拭てぬぐい後鉢巻うしろはちまきを致しておりましたところから来た綽名だというので御座いますから、如何にその働らき振りが猛烈であったかが、おわかりになるでしょう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
爺さんはいつでも手拭を後鉢巻うしろはちまきに結んでいるので、禿頭はげあたま白髪頭しらがあたまか、それも楽屋中知るものはない。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
のりぬぐってさやに納め、額の疵へ頭陀の中より膏薬こうやくを出して貼付け、後鉢巻うしろはちまきをして
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
藁草履わらぞうり穿いてじんじん端折ばしょりをして庭へ下りましたが、和尚様のじんじん端折は、丸帯まるぐけの間へすそを上からはさんで、後鉢巻うしろはちまきをして、本堂の裏の物置から薪割まきわりの長いのを持って来て
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その佐藤は成立学舎の寄宿へ這入った。そこでまかない征伐をやった時、どうした機勢はずみか額にきずをして、しばらくの間白布しろぬので頭を巻いていたが、それが、後鉢巻うしろはちまきのようにいかにも勇ましく見えた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)