当初はじめ)” の例文
旧字:當初
当初はじめ賤民の起った時には、或いは被征服者とか、被掠奪者とかいう者であったでありましょうが、それも民族の別からではない。
もし入学すれば校則として当初はじめの一年間は是非とも狂暴無残な寄宿舎生活をしなければならない事を聴知ききしっていたからである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
主税は、当初はじめから酔わなきゃ話せないで陶然としていたが、さりながら夫人、日本広しといえども、私におまんまたいてくれたおんなは、お蔦の他ありません。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この晩に限って何うした理由わけか、ふとこの「求縁」の文字が、当初はじめから異常な重大さでかれに関心を強いたのだ。
斧を持った夫人の像 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
当初はじめ貴様に棄てられた為に、かう云ふ堕落をした貫一ならば、貴様の悔悟と共に俺もすみやかに心をあらためて、人たるの道に負ふところのこの罪をつぐなはなけりや成らん訳だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かげで一伍一什いちぶしじゅうをきいている文次には、当初はじめからのいきさつがてのひらを指すようにわかってしまった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
し入学すれば校則として当初はじめの一年間は是非ぜひとも狂暴きやうぼう無残むざん寄宿舎きしゆくしや生活をしなければならない事を聴知きゝしつてゐたからである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
したがってまずもってこれが改善に尽力し、一般世間との間の距離へだたりを少くしようとしたのは、適当なことであったと申さねばなりません。差別される者も、当初はじめはむろんこれを歓迎しました。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「なるほど。では、当初はじめから何かの行きちがいでござりましょうな」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
俺も一箇ひとりの女ゆゑに身を誤つたそのあとが、盗人ぬすと家業の高利貸とまで堕落してこれでやみやみ死んで了ふのは、余り無念とは思ふけれど、当初はじめ出損でそくなつたのが一生の不覚、あれがそもそも不運の貫一のからだ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)