引括ひっくく)” の例文
有無うむを言わさず引括ひっくくり上げるつもりであったが、相手を甘く見すぎたのか。そうではない、相手が全く意表に出でたからである。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
粟沢の部落を通り抜け、柿平を過ぎて夜後よごに近づくと、川は引括ひっくくられたように狭くなって、殊に夜後橋の下ではわずかに四、五尺の幅に蹙められている。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「久し振りで奴にお目にかかる訳ですね。今度こそは、逃がしません。奴を引括ひっくくるか、でなければ辞職です」
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「烏金……と言えば、その爺婆は、荒縄で引括ひっくくって、烏の死んだのをぶら下げていたのよ。」
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの録音のあとの方に在った英国、露西亜ロシア、支那の三国密約の内容を聞いたので外務省が初めて決心が出来たんだ。大ビラで売国奴の名を付けて古川某を引括ひっくくる事が出来たんだ。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
求めて得られぬものは、奪うという法がある、ぬすむという法もある、手だれの者を頼んでそれがしを斬殺して了うという法もある、公辺の手を仮りて、怪しき奴と引括ひっくくらせる法もある。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いわば自身で仕立てた不孝の子二十四名を荒れ出すが最後得たりや応と引括ひっくくって、二進にっちん一十いんじゅう、二進の一十、二進の一十で綺麗に二等分して——もし二十五人であったら十二人半ずつにしたかも知れぬ
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
誰がそのように無礼なことを申したか名乗って出ろ、これへ名乗って出ろ。名乗って出なければ店の者共を片っぱしから引括ひっくく
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
猫又谷に較べると釜谷の荒らかさ、谷は引括ひっくくられたように急に狭くなって、逆落しに水が落ちて来る。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
芥溜ごみためを探したか、皿からさらったか、笹ッ葉一束、棒切のさきへ独楽なわで引括ひっくくった間に合せの小道具を、さあ来い、と云う身で構えて、駆寄ると、若い妓の島田の上へ突着けた、ばさばさばッさり。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あとは警察の方で、うまくやります。無論犯人を引括ひっくくるのです。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
悪い者なら行って引括ひっくくって来るがよかろうじゃねえか、役人が手をくだすまでのことがなけりゃあ、あいつらに任せておいたらよかりそうなものじゃねえか
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三十里の長い流程を、自ら穿った深い谷底に躍り狂い喚き叫んでいる黒部川も、この幅四十間あるかなしの峡口でぐいと引括ひっくくられた後、広い扇状地に向けて一挙に解放されている。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
野郎、喧嘩をしたな、喧嘩をして簀捲すまきにされて高いところから突き落されたんだ、これここに縄のあとがある、縄でギューギュー引括ひっくくられて突き落されたんだ、人をばかにしていやがる
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ナーニ、大丈夫だ、こいつを二重にして引括ひっくくれば何のことはあるものか」
「よし、一人残らず引括ひっくくるからそう思え」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「とにかく、そいつを引括ひっくくれ」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)