やす)” の例文
そこで友仁は日英の家へ移って、月俸として毎月五錠の銭を貰うようになったので、いくらか生活がやすらかになってきた。
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いかなる願ひも敢てまたさらに望むことなきまで大いなる愛と悦びのうちにこの國ををやすんじたまふ王は 六一—六三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「……今夜は泊まっていらっしゃるでしょう、梶井さんに電話をかけてやすべえと彦部さんを誘って来ていただくわ、みんなで祝杯をあげましょうよ、ねえお母さま」
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
真弓のなかに日毎にやすらかに眼覚めてゆく女性、その反対に自分のなかに日毎に容赦もなく涸渇してゆく女性、此対立を今程はつきりと認識したことはないと彼女は思つた。
水と砂 (新字旧仮名) / 神西清(著)
そちの兄、やす太郎も二上山ふたがみやまの合戦に討死した。叔父御もおととしの出陣から帰らなかった。……のう、そういう人々の霊をとむらうべく、僧門に入るのも意義のないことではない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは千葉の者であるが、馬琴ばきんの八犬伝でおなじみの里見の家は、義実よしざね、義なり、義みち実尭さねたか、義とよ、義たか、義ひろ、義より、義やすの九代を伝えて、十代目の忠義ただよしでほろびたのである。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
復一は永い間かっしていた好みのものは、見ただけで満足されるというやすらいだ溜息ためいきがひとりでに吐かれるのを自分で感じ、無条件に笑顔を取り交わしたい、孤独の寂しさがつき上げて来たが
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それには大字で『日に偶うてやすく、月に偶うて発し、雲に遇うて衰え、雷に遇うて没す』と書いてあった。
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)