序開じょびら)” の例文
一音ごとにはっきり聞き取られる位であった。多分今宵こよいの祭りの序開じょびらきの曲であろう。花やかな、晴がましい、金笛きんてきの響のようであった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
大方草稿を書きおろ序開じょびらきとして妙な声を発するのだろうと注目していると、ややしばらくして筆太ふでぶとに「香一炷こういっしゅ」とかいた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただれ日本の外交の序開じょびらきでこそあれ、ソレほど喜ぶけもないが、その時の情にまれば夢中にならずには居られない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
探偵物語の創作はこれが序開じょびらきであるので、自分ながら覚束おぼつかない手探りの形でしたが、どうやら人気にかなったというので、更に森君から続篇をかけと註文され
半七捕物帳の思い出 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
南無三宝なむさんぼう、此の柱へ血が垂れるのが序開じょびらきかと、その十字の里程標の白骨はっこつのやうなのを見て居るうちに、よっかゝつて居た停車場ステエションちた柱が、風もないに、身体からだおしで動くから
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、第一日の夜、市勝が俯向うつむいて手紙を書いてゐると、鼻のさき障子しょうじが自然にすうと明いた。これ序開じょびらきとして種々いろいろの不思議がある。段々だんだん詮議すると、これは此家このやに年古く住むいたち仕業しわざだと云ふ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
楽人団が序開じょびらきの音楽を奏してしまった所である。昼のように明るく、火のともしてある公園から、面白げに話しをしている大勢の声が聞える。後れて合奏を聞きに急いで行く人がちらほら通り過ぎる。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)