幾時いくとき)” の例文
倒るるごとくにみちこしかけりて、くがごとく熱し、つちにて打たるるごとく響くかしら榻背とうはいに持たせ、死したるごときさまにて幾時いくときをか過しけん。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と畳みかけておほする時我がはらわたゆるばかりに成りて、何の涙ぞまぶたに堪へがたく、袖につゝみてに泣きしや幾時いくとき
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幾時いくときの後なりけん、山道切拓きりひらき工事(拳大の石を一つ掘り出すこと)がようやく終ると、木遣きやりの声がする。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うして幾時いくときを経たろうか、博士は何事かに驚いて、深い睡からフト醒めた。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さだめてくさりかけてゐるであらうし、また眞夜中まよなか幾時いくときかは幽靈いうれいるといふ……えゝ、どうしょう、めたら?……いやらしいそのにほひと、けば必然きっと狂亂きちがひになるといふあの曼陀羅華まんだらげびくやうな
門司もじいでて既に幾時いくとき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夜であろうか昼であろうか? もう幾時いくとき過ぎたろう?
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)