川口かわぐち)” の例文
川口かわぐちと云う処に幸い無住むじゅうの薬師堂が有ると云うので、これへ惠梅比丘尼を入れて、又市が寺男になって居てお経を教えて居る。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
初代や、お前は私達夫婦が若かった時分、大阪の川口かわぐちという船着場ふなつきばで、拾って来て、たんせいをして育て上げた子なのだよ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
矢島優善やすよしは本所緑町の家を引き払って、武蔵国北足立郡きたあだちごおり川口かわぐちに移り住んだ。知人しるひとがあって、この土地で医業を営むのが有望だと勧めたからである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……川口かわぐちに船を揃えて出迎えた人数の中には、穴水の大庄屋、林水。黒島の正右衛門。……病気が治って、その弟の正之助。その他、俳友知縁がこぞったのです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東京近くの県で比較的様々な郷土品をつのは埼玉県であります。秩父の仕事は既に織物の個所で語りました。東京の北を流れる荒川の向岸に川口かわぐちの町があります。鋳物いものの技が盛であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
水唯開川口店 みずへだててひら川口かわぐちみせ
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
町を流るゝ大川おおかわの、しも小橋こばしを、もつと此処ここは下流に成る。やがてかたへ落ちる川口かわぐちで、の田つゞきの小流こながれとのあいだには、一寸ちょっと高くきずいた塘堤どてがあるが、初夜しょや過ぎて町は遠し、村もしずまつた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
隅田川の川口かわぐちにちかい、小さな森にかこまれた、ふしぎな洋館でした。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
古い家じゃが名代なだいで。せんには大きな女郎屋じゃったのが、旅籠屋になったがな、部屋々々も昔風そのままなうちじゃに、奥座敷の欄干てすりの外が、海と一所の、いか揖斐いび川口かわぐちじゃ。白帆の船も通りますわ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)