いど)” の例文
と口には申しましても、玄石が腰を掛けてあがばたへ、べったりと大きなおいどえて居りますから、玄石が上りたくも上ることが出来ません。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ト呼ばれて出て来た者を見れば例の日の丸の紋を染抜いた首の持主で、空嘯そらうそぶいた鼻のさきへ突出された汚穢物よごれものを受取り、振栄ふりばえのあるおいどを振立てて却退ひきさがる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「あんたはん、どないに致しやしょう、相手はおいどに帆かけて逃げやんした、どないに致しやんしょう、ちゃあ」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まあ、御免なさいまし。いえね、おいどを振らずに俥屋は走れないものか、それを聞いて見ようとそう申して……ほほほほ。あなた布団をお敷き遊ばせ」とがらにもない遊ばせことばをてれ隠しに
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「おいど、押して上げるさかい——この子、はよんかいな」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「関東のお方はおいどが据らんさかい」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
しかし狂歌は猿丸太夫さるまるだいふのおいどというあか下手ぺただが一中節いっちゅうぶしを少しうなるので、それで客の幇間たいこを持って世を渡るという男、唯此の男の顔を見ると何となく面白くなるという可愛らしい男で