対句ついく)” の例文
旧字:對句
もとは詩歌のように力を入れる言葉は、しばしば対句ついくを使うことが、東方文芸の一つの特色であったが、その中でも「おもろ」は最も顕著である。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
対句ついくうまくできたとか何とか云う意味ではなくって、こんな景色けしきと同じような心持になれたら、人間もさぞうれしかろうと、ひょっと心が動いたのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
詩は花やかな対句ついくの中に、絶えず嗟嘆さたんの意が洩らしてある。恋をしている青年でもなければ、こう云う詩はたとい一行いちぎょうでも、書く事が出来ないに違いない。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蓑笠みのかさ」という対句ついくは、丁度「梅にうぐいす」の如くほとんどつきものとして日本ではしばしば歌にさえよまれたが、この言葉も既に早く支那にあったことが分る。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
惚れてる婦人おんなが、小野小町花おののこまちのはな大江千里月おおえのちさとのつきという、対句ついく通りになると安心します。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美徳にせよ悪徳にせよ、すてきな勇侠ゆうきょうにせよ卑猥ひわいな下劣にせよ、調子のよい脚韻と響きのよい言葉とで飾られる時には、彼らはどんな物でも丸飲みにした。あらゆるものが対句ついくの材料となった。
ちんが一言いうから、その方達に対句ついくをしてもらおう。」
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
などとある対句ついくが読まれる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と津島君は対句ついくに窮した。
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしこうして珠の対句ついくにしたからには、まったく同一物でないとしても、ごく近いものであったことは疑われぬ。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「こないだうちは利いたのだよ、この頃は利かないのだよ」と対句ついくのような返事をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
表題には「推句すいく」とある。ひもといて見ると一行五字でことごと対句ついくである。始めは天高く地低しの句から起して、様々なことを歌ってある。が私たちは次の句に来て想わずも声を挙げた。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
島々の神歌は必ず対句ついくをもってくり返され、一神二名ということはむしろ普通であった。歌が衰えて名の暗記を主とすると、是を二つの神と解したのも自然である。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)