つまび)” の例文
これは、外部から彼に聞かせた者はないはずであったが、ほかの事情は知り得なくても、それだけはつまびらかに聞いていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は松本が須永に対してどんな考でどういう所置を取ったかをくわしく聞いた。そうして松本のそういう所置を取らなければならなくなった事情もつまびらかにした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
意外にも奇怪千万せんばんなる寃罪えんざいの因となりて、一時妾と彼女と引き離されし滑稽談こっけいだんあり、当時の監獄の真相をつまびらかにするの一例ともなるべければ、今その大概を記して、大方たいほうの参考に供せん。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
つまびらかに申立よと有りしかば長庵然らば言上ごんじやう仕つり候じつは私し事忠兵衞のつまとみと久しく密通みつつう致し居候處煩腦ぼんなういぬおへども去らずつひに先月の半頃なかごろ忠兵衞に見顯みあらはされ面目も無き次第故私しも覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この人またいわく、われ方便を知る、よく汝子なんじに示さん、と。女人答えていわく、わが家大小ともなおみずから知らず、いわんや汝よく知らんや、と。この人またいわく、われ今つまびらかにくす、と。
「その方たちは、至極、つまびらかなことを申すが、いったいそのような航海をして、南蛮までも参ったことがあるのか」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実は昨夕にもこの恐るべき再度の吐血が来そうなので、わざわざモルヒネまで注射してそれを防ぎ止めたのだとは、のちになってその顛末てんまつつまびらかにした余に取って、全く思いがけない報知であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
構想の雄大と、舞台の地域の広さは、世界の古典小説中でも比類ないものといわれている。登場人物なども、つまびらかに数えたなら何千何万人にものぼるであろう。
三国志:01 序 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その足跡あしあとは余りに広くてつまびらかでないが、彼が、遊歴の地を多く西国方面に求めたことはたしかであろう。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま、忠朝が世間ばなしのうちにした事なども光圀はもっとつまびらかに知っているはずであった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なる秘術をしるして、母の大愛と、武蔵との試合をつまびらかにしているが「武蔵に勝つ」とは書いていない。彼は生涯、武蔵に負けたと人にも語り、その負けたことを尊い記録としていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからの事は、つまびらかに話せば、余りに長い事になりすぎる。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)