寝返ねがえり)” の例文
旧字:寢返
寝返ねがえりに七輪を蹴倒して、それから燃え出して、裾へうつる時分に、熱いから土間へころがって、腹を冷していたんだそうで。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分がこんな事をぐるぐる考えているうちに、蚊帳かやの中に死人のごとくおとなしくしていたあによめが、急に寝返ねがえりをした。そうして自分に聞えるように長い欠伸あくびをした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「帰れ! 招喚よびにやるまでは来るな、帰れ!」と老人は言放って寝返ねがえりして反対むこうを向いて了った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
念入ねんいりだ、恐しい。」と言いながら、寝返ねがえりの足で船底を蹴ったばかりで、いまだに生死しょうじのほども覚束おぼつかないほど寝込んでいるつれの男をこの際、十万の味方とはげしく揺動かして
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その挙動ふるまい朦朧もうろうとして、身動みうごきをするのが、余所目よそめにはまるで寝返ねがえりをするようであった。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手繰りながら、ななめに、寝転んだ上へ引き/\、こうべをめぐらして、此方こなた寝返ねがえりを打つと、糸は左の手首から胸へかゝつて、宙になかだるみて、目前めさきへ来たが、う眠いからなんの色とも知らず。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)