寄場よせば)” の例文
……非人寄場よせば勧化かんげ比丘尼のほうも残らずさらいましたが、このほうにもいなくなったなんてえのは一人もねえんです。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おれはほかの誰でもない表具ひょうぐ職人の栄二だ、ぬすっとの汚名をきせられ、往来で叩きのめされ、島の寄場よせばへ送られて、一生をめちゃめちゃにされた人間だ。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
安政中江戸に行われて、寄場よせばはこれがために雑沓ざっとうした。照葉とは天爾波てにはにわか訛略かりゃくだというのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『梅見船』第一巻「おふさ寄場よせばに物の本を読む所」と題したる挿絵もまた妓家の二階にして、「火の用心」と「男女共無用の者二階へあがるべからず」と張紙したるかたわらの窓下には
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「あ……? 召集めしのお布令ふれじゃ。出布令でぶれの貝が、寄場よせばのほうで鳴っている」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて藤八はお節を同道どうだうして島田宿の我が家へ歸り宿場しゆくば用向ようむき萬事の儀は弟岡崎屋藤五郎へ頼みおき寄場よせばへ人を走らせ雲助がしら信濃しなのの幸八を呼寄よびよせ駕籠かごちやう人足三人づつ尤も通し駕籠なれば大丈夫だいぢやうぶな者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人足の寄場よせばであった石川島。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いかに非人ひにん寄場よせばといいながら、よくもまあこうまで集めたと思われるほど、五つから七つぐらいまでの乞食の子供をかずにしておよそ五十人ばかり。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
帯刀は寄場よせばに詰めていたが、急に目付役今村善太夫に招かれて、源太郎、采女らの先に出た。
おれが石川島の寄場よせばへ送られるまえ、まだあいつと世帯を持っていたときにも、津ノ正はおようのやつにひかされて、ずいぶんおれの無理をきかずにはいられなかったもんだ
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
寄場よせばの出来事についての再吟味はどうなるのか、どんなに岡安喜兵衛が奔走しても、あの傷害の現場は部屋の者たちが見ていたのだから、このまま沙汰なしで済ませるわけにはいかないだろう。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)