宿)” の例文
「お前の友達つて人は本當に今日來るの?……何なら今夜内へ宿めてやつても可いとおつ母さんが言つてお出でだつた。」
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
いやたとえ一晩でも宿めて貰って、腹の中とは云え悪くいうは気がとがめる、もうつまらん事は考えぬ事と戸を締めた。
浜菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「今日は是非とも洗馬せばを越えて贄川にえかわ辺まで参りたくあれど、女の足のご難儀ならば元山もとやまの宿で宿まりましょうほどに、ゆるゆるとおいでなさりませ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
全体が男を宿めた女の歌という趣にする方がもっと適切だから、そうすれば、「一夜づま」ということになる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いや、鎌倉かまくらまで一緒に乗り合わして来た友人にね、此の暴風雨あらしじゃ道が大変だから、鎌倉で宿まって行かないかと、われたけれどもね。やっぱり此方こっちが心配でね。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
手前、何々屋でございます、いかがさまです、お安くお宿めします。お座敷は至極奇麗ですと——
「三階に空いた寝床ベッドがありますから、連れて行って寝かしてやりましたわ。服装は相当にちゃんとしているのね。あんなにお酒に酔ってどうしたのでしょう。今晩は宿めてやりましょうか」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「いえ、御頼みになればいつでも宿めます」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「が、それともお浦をよこすか。……お浦をよこすならわしはいる。……宿まってもいい、お浦をよこせ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうだ俺を宿めてくれぬか?」「どうぞお宿まりくださいますよう」
「どこぞへ宿まらずばなりますまい」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)