宿志しゅくし)” の例文
寛文かんぶん十二年というと、かれはもう四十五歳、宿志しゅくしを立ててから二十七年。史寮を設けてそれに着手してからちょうど十五年になる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが知れる人々のうちにはいかにもして我国の演劇を改良なし意味ある芸術を起さんものをと家人かじんの誤解世上の誹謗ひぼうもものかは、今になほ十年の宿志しゅくしをまげざるものあり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これから風呂敷を解いて衣服きものを着替え、元のように風呂敷包を仕舞って寝ようと思いましたが、これまで思い付いた宿志しゅくしを遂げないから、目はさかさまにつるし上り、手足はふる
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これ彼得ペートル大帝の宿志しゅくしを成せし一端にして、爾来じらい露国は一方においては亜米利加アメリカの西北なるアラスカを占領し、他方においては亜細亜アジアの東北を掩有えんゆうし、既にその利爪りそうわが千島に及べり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
たすク可キ者ノ我国ニ欠損けっそんシテ而シテ未ダ備ハラザルヲ思ヒ此ニ漸ク一挙両得ノ法ヲもとメ敢テ退食たいしょくノ余暇ヲぬすンデ此書ヲ編次シすなわ書賈しょこヲシテ之レヲ刊行セシメ一ハ以テ刻下教育ノ須要ニ応ジ一ハ以テ日常生計ノ費ヲ補ヒテ身心ノ怡晏いあんヲ得従容しょうよう以テ公命ニ答ヘント欲ス而シテ余ヤト我宿志しゅくしヲ遂ゲレバ則チ足ル故ヲ
積年の宿志しゅくしが届いて信長から直接、この誓約を得たからには、もはや実現を見たように、まぶたの熱くなるものをおさえ得なかった。更に信長はまた
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう急激に決行へ焦心あせって来たこの人々は、もう一日も猶予ゆうよはならない気がして、吉良家の屋敷替えという絶好な機会を掴んで、宿志しゅくしを遂げようとするものらしく、密々ひそひそと、それから半刻も
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)