宿々しゅくじゅく)” の例文
宿々しゅくじゅくの泊りでは、できるだけ少なく食い、小さくなって眠り、呼べば、かならずひと声で飛んできて、まめまめしい挨拶をする。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
宿々しゅくじゅくでは夜の女が、防ぎようもないほど、夜ごと、幕営へ色をひさぎに来るが、今夜はかたくいましめなければならないと思う。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで氏郷は之をたすけて一揆を鎮圧する為に軍を率いて出張したが、途中の宿々しゅくじゅくの農民共は、宿も借さなければ薪炭など与うる便宜をも峻拒しゅんきょした。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日野まで相当の宿々しゅくじゅくもありますけれど、裏街道ときてはただ茫々ぼうぼうたる武蔵野の原で、青梅までは人家らしい人家は見えないと言ってもいいくらいです。
普通の中仙道は松井田から坂本さかもと軽井沢かるいざわ沓掛くつかけ宿々しゅくじゅくを経て追分おいわけにかかるのが順路ですが、そのあいだには横川よこかわの番所があり、碓氷うすいの関所があるので
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……海も山もさしわたしに、風でお運び遊ばすゆえに、半日には足りませぬが、宿々しゅくじゅくひろいましたら、五百里……されば五百三十里、もそっともござりましょうぞ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道筋の村の名も知らず宿々しゅくじゅくの順も知らずに、ただ東の方にむいて、小倉こくらには如何どう行くかと道を聞て、筑前を通り抜けて、多分太宰府だざいふの近所を通ったろうと思いますが、小倉には三日めについた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これは宿々しゅくじゅく二十五人、二十五ひきの常備御伝馬以外に、人馬を補充し、継立つぎたてを応援する定員の公役を設けることであって、この方法によると常備人馬でも応じきれない時に定助郷の応援を求め
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御用の道中であるから銘々の荷物は宿々しゅくじゅくの人足どもに担がせる。その混乱と間違いとを防ぐために、組ごとに荷物をひと纏めにして、その荷物にはまた銘々の荷札をつける。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)