存生ぞんじょう)” の例文
存生ぞんじょうのみぎり何かとたよりて来し大抵のやからはおのずから足を遠くし、その上親戚しんせきも少なく、知己とても多からず、未亡人おふくろは人好きのせぬ方なる上に
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
これは清衡きよひら存生ぞんじょうの時、自在坊じざいぼう蓮光れんこうといへる僧に命じ、一切経書写の事をつかさどらしむ。三千日が間、能書のうしょの僧数百人を招請しょうせいし、供養し、これを書写せしめしとなり。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし存生ぞんじょうだったら地震に遭逢でっくわしたと同様、暗黒くらやみでイキナリ頭をドヤシ付けられたように感じたろう。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
岩倉具視いわくらともみ公の存生ぞんじょう中には、公が能楽の大保護者として立たれたるがために、一旦衰へたる能楽に花が咲いて一時はやや盛んならんとする傾きを示したにかかはらず
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
幸いに、彼が存生ぞんじょう中には、たいした事件もなく、世間はいよいよ泰平と無事にれ、この間に、宋朝のびょうも、仁宗から、英宗、神宗、哲宗てつそう御代ぎょだい四たびの世代りを見た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生の存生ぞんじょうの時よりも派手な暮らしをしておられる。その生活はいつの秘密だということであった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
存生ぞんじょう時の罪業に責められ、鶏と生まれ変り苦しむところを、常羅漢悔謝の賜ものにりて解脱したと言うと、これより郡人仏事をなすごとにこの僧が来れば冥助を得るとしたと。
机竜之助が存生ぞんじょうの者であるかの如く考えたり、そうでなくても、しかるべき系統を伝えて、竹刀しないの響を立てていることとばかり信じて立寄って来るのですから、その度毎たびごとに与八は
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母がまだ存生ぞんじょうの時だった。……一夏あるなつ、日の暮方から凄じい雷雨があった……電光いなびかり絶間たえまなく、雨は車軸を流して、荒金あらがねつちの車は、とどろきながら奈落の底に沈むと思う。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父が存生ぞんじょうの頃は、隅田川を前に控え、洲崎すさきの海をうしろいだき、富士筑波を右左に眺め、池に土塀をめぐらして、石垣高く積累つみかさねた、五ツの屋の棟、三ツの蔵、いろは四十七の納屋を構え、番頭小僧、召使
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)