存命ぞんめい)” の例文
なかにも伊那丸は、おさなくして別れた父、なき人とばかり思っていた父——その父の存命ぞんめいを知っては、いても立ってもいられなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隱亡をんばう彌十に頼み燒棄やきすてさせ候段不屆に付存命ぞんめい致しをり候はゞおもき御仕置しおきにもおほせ付らるべきところ鈴ヶ森に於て殺害せつがい致されしにより其つみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしおさな時分じぶんには祖父ぢぢ祖母ばばもまだ存命ぞんめいで、それはそれはにもれたいほどわたくし寵愛ちょうあいしてくれました。
ことわざにいうごとく、親が存命ぞんめいで孝行する機会のあるときに孝道の教訓を聞いても、なに分かりきったこと、百も承知と思いながらおこたるが、親無きあとで『孝経こうきょう』を読みかえすと
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
殺されいかでか罪にふくし申さんやと申すに大岡殿其方如何にあらそふとも河原の死骸しがいは馬丁とうつせみの兩人にして昌次郎夫婦は存命ぞんめいいたし居るぞ然るに傳吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はやそのひとみはうるみ、胸は恋しさにわななくものを、まだ存命ぞんめいときいては、そぞろ恩愛のじょうあらたにひたひたと胸をうって、歓喜かんき驚愕きょうがくと、またそれを、怪しみうたがう心の雲がりみだれる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其方儀松五郎たづねの所未だ行衞ゆくゑ相知れざる趣きうつせみ事千代存命ぞんめいも是れ有らば入牢の上屹度きつと被仰付之處當人たうにんうつせみ相果候上は一等をげんじられ江戸構えどかまへ申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)