女童めのわらわ)” の例文
呼び出された女童めのわらわは、雨の降り込む簀子すのこの板敷にしょんぼり立っている男の姿をやみかしながら、さも驚いたらしく云った。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのときほかの女院からまた女房や女童めのわらわまで、みな泣き顔をつつんで帝へお別れをつげに来たのをしおに、皇后もやっと泣く泣くお手をとられて立った。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立花はめず、おくせず、驚破すわといわば、手釦てぼたん、襟飾を隠して、あらゆるものを見ないでおこうと、胸を据えて、しずか女童めのわらわに従うと、空はらはらと星になったは、雲の切れたのではない。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
騒いでいた男の子の一ト組が駈け去ると、こんどは女童めのわらわの組だけでまりをつき、鞠つき唄をうたっていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれは渡殿の軒に近く紅梅がほころびていたことを思うと、或る春の日のことであったのは間違いないが、彼が西の対屋たいのや簀子すのこのところで、二三人の女童めのわらわを相手に遊んでいると
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女童めのわらわの一人の肩に、袖でつかまって差覗さしのぞく。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えならぬ香気や、女性にょしょうのいたらしい部屋ぬくみまでするのだが、さて、女童めのわらわひとり見当らない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
召使われている女童めのわらわなどを手馴てなずけてふみの取次をしてもらうのが常套じょうとう手段で、もちろんその辺にぬかりがあるのではなかったが、それも、今日までに二三度持たせてったのに
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女童めのわらわのこりて、合唱す——
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここには中宮ちゅうぐう(皇后の禧子よしこ)もおり、余の女房の小宰相こさいしょうや大納言ノ局もおる。水仕みずしの末の女童めのわらわまで、そもじを見失うたら途方にくれてまどい泣こう。よも六波羅とて、女は追うまい。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女童めのわらわ三人——合唱——
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして七ツぐらいな女童めのわらわが肩にからみついて母と客の話をしきりに横から邪魔しぬく。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、彼女も主屋おもやへ帰った。そしていつものように、釜殿かまやの大土間で夕餉ゆうげ働きをしている女童めのわらわ下部女しもべおんなにさしずなどしていると、遠い所の表門で、あわただしい駒音がひびいていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女童めのわらわや老女まで、およそはみな暇をやってあったので、百年の歴史をもつここの門も空風からかぜが鳴っているだけだった。ただひとり残されていた老家職が、守時のすがたに、さんぜんとむせいた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女童めのわらわはすぐ庭向うの離れへ駈けて行ったが、やがてまた縁の外から
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「先へ行った三位ノ局の女童めのわらわです」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)