女神じょしん)” の例文
とすらりと立った丈高う、半面をさっと彩る、かば色の窓掛に、色彩羅馬ロオマ女神じょしんのごとく、愛神キュピットの手を片手でいて、主税の肩と擦違い
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐその御手洗のそばに、三抱みかかえほどなる大榎おおえのきの枝が茂って、檜皮葺ひわだぶきの屋根を、森々しんしんと暗いまで緑に包んだ、棟の鰹木かつおぎを見れば、まがうべくもない女神じょしんである。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にじとばり、雲の天蓋てんがいの暗い奥に、高く壇をついて、仏壇、廚子ずしらしいのが幕を絞って見えますが、すぐにすがたが拝まれると思ったのは早計でした。第一女神じょしんでおいでなさる。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これを聞いて、活ける女神じょしんが、なぜみずからのその手にて、などというものは、烏帽子折えぼしおりを思わるるがいい。早い処は、さようなお方は、恋人に羽織をきせられなかろう。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
して——(女神じょしんは、まったくきておいでなさる。幽寂しんとした時、ふと御堂みどうの中で、チリンと、かすかな音のするのは、かんざしが揺れるので、その時は髪をでつけなさるのだそうで。)
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……女神じょしんの殿堂の扉の下にやがてひざまずいた私は、それから廚裡くりの方へ行こうとしました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たまにてへる白銀しろがねみのの如く、かいなの雪、白脛しらはぎもあらはに長く、斧を片手に、てのひらにその月を捧げて立てる姿は、かたも川もつまさきにさばく、銀河に紫陽花あじさい花籠はなかごを、かざして立てる女神じょしんであつた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)