たく)” の例文
門を出る頃には、もう弟子の誰彼に追ひつかれて、うはぱりは滅茶々々にたくられ、若者の手には片袖一つしか残つてゐなかつた。
蔵元屋の残り金を欲しいだけたくり上げて、役目柄案内知った長崎あたりから、日本国の外へでも出る了簡で御座いましっろうか。
れったいな。」新吉は優しい舌鼓したうちをして、火箸を引ったくるように取ると、自分でフウフウ言いながら、火を起し始めた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
自分のは実にがさつに引ったくるが早いかぐっとかぶって並居なみいる僧正大官を驚かしたことも、そして今、そのノウトルダムは巴里第一の名所として
と、おめきあわせて、槍をたくった大介は、それを持ち直して、相手の胸いたへ突き返した。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
之をも権田が引ったくって自分で拭いて遣った、全く此の男の恋は野蛮人の恋であると、余は此の様に思いながら熟々と秀子の顔を見たが、真に断腸の想いとは此の事であろう
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その手紙をひったくるようにして母親のへやへ入ると、夢中で戸をしめきって鍵をかけた。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
亥「やい同心、刃物や火道具じゃア有るめえし、たくるには及ぶめえ、なんだと思う金じゃアねえか、さアおれが検めて見せてやろう、此の通りだ、何も不都合はあるめえ、旦那、おふところへ入れますよ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
滝田氏はきよろ/\四辺あたりみまはしたが、手紙が目につくと、猿のやうに手を伸ばして、それをたくつた。
天蔵は、引ったくるように、国吉の手から鉄砲も火縄も奪って、森の間に走りこんだ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、刀をたくって
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)