奇功きこう)” の例文
これをあらそう者あるべからず、あきらかみとむるところなれども、日本の武士道ぶしどうを以てすれば如何いかにしてもしのぶべからざるの場合を忍んで、あえてその奇功きこうおさめたる以上は
と、甚七は、清洲城下の祭の夜、ちまたの中にゆくりなく信長主従の微行しのびを見かけ、むらむらと奇功きこうに駆られたまま、信長を刺そうとして、かえって捕えられて、憂き目に会ったことを
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかなる奇功きこうたてたるやはかりがたし、こと此地このちに一名園めいゑんくはへたるは私利しりのみなりといふべからず、さて菊塢きくう老年らうねんには学問も少しは心がけしと見え、狂歌きやうか俳句はいくのみ手づゝにはあらず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
この出来事において、明智の方にはむべき油断があった訳ではない。ただ、賊が、警察よりも、福田氏よりも、明智小五郎よりも、十歩も二十歩も先んじて、きょいて奇功きこうそうしたに過ぎないのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうして、忍剣とをともにしながら、忍剣のいのちをまもっていたかれである。なんで、敵方てきがたむねをふくんで忍剣をころそうとしてきた蛾次郎に、むざと奇功きこうをあげさせるものではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)