夫婦みょうと)” の例文
そして顔と顔を見合せた時、少年はほとんど友白髪まで添遂げた夫婦みょうとのごとく、事もなげに冷い玉かと見えるお雪の肩に手を掛けて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「夜があけると、その男が、こうなるのも大方宿世すくせの縁だろうから、とてもの事に夫婦みょうとになってくれと申したそうでございます。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
短い夫婦みょうとの契り——ほんとに、夢だったかもしれないと、得耐えたえず門柱にりかかった千浪は、いつしか地に伏して泣きじゃくっていたのだった。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
世間によくあるためしで、主人は船宿の女と夫婦みょうと約束でもして置きながら、それを反古ほごにして他から嫁を貰った。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
和「何サ、その長二郎と申す者は役者のようない男じゃによって、島路が懸想でもしてるなら、身が助七に申聞けて夫婦みょうとにしてやろうと思うたのじゃ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「その血染めの剃刀で俺のひげを当っているんだから、一つ間違って手が滑ると夫婦みょうと心中だ、ハッハッ、ハッ」
「わりも、独り身で寂しかじゃろな。魂のなかけだもんでさえ、夫婦みょうと仕合しあわせに飯をたべているからな」
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
「行く末、信長の三女をめあわそう。よい夫婦みょうとができよう。——賢秀、親元のそちには、異存ないか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「のう、わたしには、もはや、こんなよそよそしげな仲では、いられない——雪どの、たとい、今夜、死なねばならぬとしても、わたしは、そなたと夫婦みょうとになりたい——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
久「えゝと、待てよ……お前と夫婦みょうとになるなれば、わしは表で馬追むまおい虫、お前は内で機織虫はたおりむしよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お前がそんなに側へ寄って歩くと、人が、夫婦みょうとのように思うではないか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかについ夫婦みょうとであったろうかと、街の者は、ただ、想像に描いた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あのようにまどかに、夫婦みょうとが、一つ道を歩み、一つ唱名をして生活くらすことができたら、ほんに、幸福であろうに」と、凡下たちも、自分たちの、ゆがんでいる家庭や、倦怠期けんたいきに入っている夫婦仲や
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
至極、似あいの夫婦みょうとであった。花婿の与一郎忠興は、後の細川三斎。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)