大面おおづら)” の例文
木戸の前にいた見物も、どちらかといえば見世物側に同情があって、市五郎の大面おおづらを憎がっていたのですから、そうなると面白がって
大家などといって、ひどく大面おおづらしているというから、これからわが輩が行って、一番へこましてやろうというんだよ。
支那の狸汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
あの大面おおづらが、お前様、片手で櫓を、はい、押しながら、その馬柄杓ばびしゃくのようなもので、片手で、ぐいぐいとあおったげな。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鳥さしも鷹匠とおなじことで、ふだんは御用をかさにきて、かなり大面おおづらをしているものであるが、この場合、かれは半七の救いを求めるように至極おとなしく振舞っていた。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
稀〻たまたま、それが父の気もちにさわったらしく「何だ、その大面おおづらは。わずかばかりの給料を取って、働くのを鼻にかけるのか。人間、働くのは当りまえだ。働くのが嫌なら、やめちまえっ」
一杯も飲まなくっちゃあやりきれたものでねえ、そこで、商売上やむことを得ずしてお前たちを助けようてんだ、あんまり大面おおづらをするなよ、と内心こう思って脈を取ったり
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また調貢ちょうこう、収税も怠っていないのに、いきなり民情も知らぬ人間が、中央の辞令など持って、「権守」だの「介」だのと、大面おおづらして赴任して来たところで、そんな奴等に、おいそれと
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぶくりと黄色い大面おおづらのちょんびり眉が、女房の古らしい、汚れた半帕ハンケチを首に巻いたのが、鼠色の兵子帯へこおびで、ヌーと出ると、ひねってもねじっても、めじりと一所に垂れ下る髯の尖端とっさきを、グイと
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へへへ、今夜はおさんもってるけれど。まあ、可いや。で何だ、痘痕あばたの、お前さん、しかも大面おおづらの奴が、ぬうと、あの路地を入って来やあがって、空いたか、空いったか、と云やあがる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査まわり様が階子はしごさして、天井裏へ瓦斯がすけて這込はいこまっしゃる拍子に、洋刀サアベルこじりあがってさかさまになったが抜けたで、下に居た饂飩うどん屋の大面おおづらをちょん切って、鼻柱怪我ァした、一枚外れている処だ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真夏の事でね……五十づらをてらてら磨いて、薄い毛を白髪染さ、油と香水で真中まんなかからきちんと分けて、——汗ばむから帽子をかぶりません——化粧でもしたらしい、白赤くあぶらぎった大面おおづらおとがいを突出して
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)