大槻おおつき)” の例文
この頃根岸倶楽部クラブより出版せられたる根岸の地図は大槻おおつき博士の製作にかかり、地理の細精さいせいに考証の確実なるのみならずわれら根岸人に取りてはいと面白く趣ある者なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
枳園は当時京橋区水谷町みずたにちょう九番地に住んでいて、家族は子婦よめ大槻おおつき氏よう、孫むすめこうの二人ふたりであった。嗣子養真は父にさきだって歿し、こうの妹りゅうは既に人に嫁していたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それに就いて、わたしが曖昧あいまいの説明を試みるよりも、大槻おおつき博士の『言海』の註釈をそのまま引用した方が、簡にして要を得ていると思う。言海の「る」の部に、こう書いてある。
大槻おおつきせがれなども内々見舞に来て、官軍と賊軍と塾の中で混りあって、朝敵藩の病人を看病して居ながら、何も風波ふうはもなければ苦味にがみもない。ソンナ事が塾の安全であったけでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もう一人ひとり、いっしょにきた原田はらだは、下谷したや大槻おおつきというお医者いしゃのところへいきました。
「今日はひょっとしたら大槻おおつきの下宿へ寄るかもしれない。家捜しが手間どったら寄らずに帰る」切り取った回数券はじかに細君の手へ渡してやりながら、彼は六ヶ敷むつかしい顔でそう言った。
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
(と、洛東清水寺成就院じょうじゅいんの住職、勤王僧月照げっしょうの忠実の使僕しもべ大槻おおつき重助は物語った)さて裏門から出て見ますると、その門際もんぎわに顔見知りの、西郷吉之助様(後の隆盛)が立っておられました。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大槻おおつき先生はその著『言海げんかい』において、人並みという言葉を説明して、世の常の人のつらなること、尋常じんじょうと説いている。これをもって見ても人並みまたは一人前ということが平均とは違うことがわかる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大槻おおつき斎宮いつき)どのからの書状でございます。
大槻おおつきか、会おう」
大槻おおつきさまに、早く。