夜叉羅刹やしゃらせつ)” の例文
そこで智心は平生からかのお歌を憎んで居りまして、あの女は悪魔だ。俊乗さんを堕落させる夜叉羅刹やしゃらせつだなどと申して居りました
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
曹賊の経歴を見れば、朝廷にあっては常に野心勃々ぼつぼつ。諸州に対しては始終、制覇統一の目標に向って、夜叉羅刹やしゃらせつの如き暴威をふるっている。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これもっ九天邪きゅうてんじゃるの使つかいもうけ、十悪を罰するのつらね、魑魅魍魎ちみもうりょうをして以て其奸そのかんるる無く、夜叉羅刹やしゃらせつをして其暴そのぼうほしいままにするを得ざらしむ。いわんや清平せいへいの世坦蕩たんとうのときにおいてをや。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夜叉羅刹やしゃらせつ猶予ためらわず、両個ふたり一斉に膝を立てて、深川夫人の真白き手首に、黒く鋭き爪を加えて左右より禁扼とりしばり三重みえかさねたる御襟おんえり二個ふたりして押開き、他目ひとめらば消えぬべき、雪なす胸のの下まで
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
われらの尊む夜叉羅刹やしゃらせつの呪いじゃ。五万年の昔、阿修羅あしゅらは天帝と闘うて、すでに勝利を得べきであったが、帝釈たいしゃく矢軍やいくさに射すくめられて、阿修羅の眷属けんぞくはことごとく亡び尽した。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)